
これまでのあらすじ
ついに、無事ライブイベントが終わった。
ななたつさんは挙動不審すぎて職務質問されかねない震えるアルカパみたいになっていたのだけれど、なんとか初日は無事に過ごすことができた。
だが安心は出来ない。なぜなら2日目はさらなる人たちとの遭遇に震えることになるのだから。
今から一年以上前の話だ。
当時はPSO2というゲームにとても夢中になっていて、おやすみの日は朝から晩までやっていたほどだった。
友達と通話しながら遊んだり、表示時間が24時間を超えていたり、でもレア装備は出なかったりと色々あった思い出のゲーム。
そんなゲームでだらだらと楽しく過ごしていると、ある日仲良くしていた友達が変な人に絡まれてしまった。
その友達は気遣い屋で、お節介で、たとえ自分にデメリットがあっても他人を助けちゃうようなお人好しで、ずっと仲良くしてもらいたいような人であった。だからこそ、せめて役に立ちたいと思って話を聞いてみることにした。
どんな内容だったか忘れてしまったのだけれど、すごく困っているようで、なんとかしてあげたいのに何も出来ないのが少し悔しかった。結局わたしは話を聞くことしかできなかったのだ。
そして、その変な人にすらつい優しくしてしまう彼にこう言ったのだ。そういうときは男らしくどーんとだね、なんて偉そうに。
すると彼は答えた。
「いやわたし女だけど」
Day2/Part1
東京の冬なんて夏と変わりませんわ、なんて北海道の人から聞いたのはいつの事だったか。ならわたしは田舎育ちだからきっと寒くないねなんて余裕かましてたのに寒すぎて鼻水出るわ震えるわで、もうあの人の言うことは信じない、そう誓ってしまった2日目のお昼、わたしはアキバ近くにある駅の改札で棒立ちしていた。重要な人と待ち合わせをしているからだ。
その人の名前はカナといって、とても気遣い屋で、お節介で、お人好しで、いつかお会いしてみたいとは思っていた人だった。ちょっと会うの怖いのでびびりまくっているが。
そして実は今回が初の顔合わせ。以前軽く顔写真を渡していたので全然知らない人というわけではないのだけれど、それでもやっぱり怖いものは怖い。想像と違いすぎて拒否されたらどうしよう。わたしはカナの思っているような素晴らしい人じゃないのだ。
とはいえがたがた騒いでも仕方ない。一先ずカナを探すより探してもらった方が早いだろうってことで新しい顔写真を送り、改札で待っているよ、とLINEで伝えてはや5分。そろそろ到着する頃だろうか。というか見つけられるだろうか。個人的に通行人ってみんな同じ顔しているように見えるんだけど。
なんて感じでキョロキョロしてたら改札関係ない方向から突如として近づいてきた女性が。なんだかふんわりとした印象の服を着ていて、センスがいいのはもちろんのこと、可愛いデザインであった。帽子もとてもよく似合っており、なんかほんと都会っ子って感じが。もっとパリッとしたキャリアウーマンかと思っていたので意外。よく似合っている。ちなみに慣れてきたのがなんとか握手することに成功。目は泳ぎまくってたと思うが。
なにやらあまり来たことがないのもあって逆方向から出てきたらしい。それで外をぐるっと回ってきたのだとか。相変わらずの苦労人である。無理させてすまないな。
とりあえずまだ時間に余裕があるので、近くにあったカフェへと。
中に入って適当に注文してだらだらと雑談を。どうやらわざわざお土産を買ってきてくれたようで、さらには超可愛い物ときている。猫のしっぽをモチーフにしたようなお菓子らしい。箱からして可愛いのでテンションマッハ。これけっこう有名なのではないだろうか。余談だがめっちゃ美味しくて父親も絶賛しておりました。ありがとうございます。
ちなみにカナに加えてもう1人会えそうなデュラ君という子がいるのだけれど、どうやら今日は仕事らしく、運が良ければ昼食のタイミングで会うことが可能らしい。めっちゃ迷惑な感じがするが気のせいに違いない。うん。
そんなわけでそろそろ時間も頃合いではないか、ということでデュラ君が近場にいるらしいアキバへと移動することに。そして吊り革を持たないカナを見てしまう。なんだろう、一般スキルなのかなそれは。コツを教えてもらえないだろうか。
秋葉原駅の電気街口へと出て、その広さと人の多さに圧倒されてしまった。いい加減慣れないといけないのだが、キノコ生えるんじゃないかと思えるほど長いことひきこもった所為でまだまだ時間がかかる感じ。先は長そうだ。
そこから2人で歩きつつ、カナが色んな説明をしてくれた。わかりやすく、かつ丁寧に。シュタゲ好きなのを聞いてわざわざラジオ会館にまで連れて行ってくれたのである。なんて優しいっていうかほんと相変わらずというか、なんでここまでしてくれるのか不思議レベルである。返せるものがないのだが。

看板にでかでかと書かれたアニメ絵に感動しつつ、人通りの多さにフラつき、カナの隣でキョロキョロと辺りを見渡して歩きまわった。そしてなんか普通にメイドさんがチラシ配ってて目を疑ってしまった。ここは本当にアキバというイメージ通りの街らしい。まさか本当にこんな人がいるだなんて。
そうこうしていると集合場所が決定。駅近くにあるデニーズとなった。入ったことないとか言えないんですが。ごめんなさいひきこもりで。
デュラ君がいつ頃になるか謎なので、一先ず2人で注文を。カナは美味しそうなオムライスだっただろうか。写真見たらオサレな感じだったのを覚えている。次来ることがあったら頼んでみよう。
んじゃわたしは何食べようか、とメニューをじろじろ。そして何やらパスタで上にチーズが乗っているようなものを発見。ラザニアというらしい。美味しそうである。そして普段は「すぱげってぃ!」とかホザいている田舎者の分際で、こういうときはドヤ顔で「パスタにしようかな」である。なんてゲスなのだろう。我ながらゲスい、ゲスすぎる。ザ・ゲス。
そうこうしているとカナが「来た」と一言。ついに噂の名高きデュラ君の登場らしい。さぁどんな人だと振り返るとえらいイケメンがそこにいた。スラリとした体型に高身長、さらにはカッコイイ今どきな若者って感じのオーラ。なんてことだろう。とんでもない奴が来てしまったようだ。一先ず立ち上がり握手を。いつもお世話になってます。そして全力でhshshshshsと行きたいところなのだがそうはいかない。落ち着こう。
ここからかなりテンション高く話していた記憶が。デュラ君が少々意外すぎたのである。まさかこんな人だとは思いもよらず。ちなみにハンバーグっぽいものを注文したっぽい。これから仕事だし栄養つけないとだめだよデュラ君!
そうこうしているとオムライスとラザニアが到着。なんか美味しそうである。
パスタなんて食べるの久しぶりだよなあなんて思いつつ掘ってパスタを取り出そうとするも、なぜか掘っても掘っても出てこない。おかしい。パスタなのにパスタがないとはこれいかに。たこ焼きにタコ入ってないレベルである。なぜだなぜだと掘るとカナから「ラザニアってそういう料理じゃなかったかな」とありがたいお言葉が。マジかよ。つまりこのチーズみたいな薄っぺらいブツがこの料理の本体らしい。聞いてないよ。許さんぞデニーズ。
食事を終え、お店の外へ。デュラ君にもみじまんじゅうを渡しつつ、さらにカナからも猫のしっぽなるお土産が手渡された。またいつか会えるといいな、なんて言いつつお別れの時間。本当にあっという間である。
今度一緒にメイドカフェ行こうぜ、などと言いつつ笑顔で交わしたあの握手は、今も大切な思い出となっている。
ありがとうデュラ君。いつか行こう、あのヴァルハラへ。
~完~
などというわけはなく、実はさらにカナがシュタゲファンおすすめの場所へと案内してくれるとのこと。どんだけ面倒見がいいんだろうこの人は。良い嫁になりそうである。
そして記憶が正しければ、この子はシュタゲについて特に知識があるわけでもなく、わたしがシュタゲ好きであるというのを聞いて自分なりに調べ、わたしが喜びそうなところをチョイスして案内しようと来てくれたようだった。神だろうか。この世に舞い降りた神。または女神っぽい何か。妖精さんである可能性も捨てきれない。普通わざわざ興味のないアニメの元ネタを調べて、その友達のために場所やらなんやら調べて案内までするだろうか。ないな。爪楊枝の先ほどもありえない。
浦島太郎ではないが、恩返しとしていつの日かわたしがこの子の役に立とう。全く見当もつかないが、こんな朴念仁のアンポンタンでも何か役に立てる日が来るかもしれない。そのときには是非この子のチカラになろうじゃないか。
片手にスマホを持ち、こっちこっちと案内してくれる自分より一回り背の低い彼女を横目に、そう思ったのである。
「ここだ!」
案内された先はとあるカフェらしきところ。
そうカフェ、ただのカフェなのだが凄まじい既視感。どこかで見たことが、ある。どこだったか。さっぱり思い出せない。こんなところには来た記憶はないのだが。
そして聞いてみたところ、どうやらここはシュタゲのフェイリス・ニャンニャンのモデルとなった場所らしい。そしてフラッシュバックするアニメのシーン。そうかアレか。たしかにそっくりというかそのまんまだ。ちなみに中の店もマジでメイドカフェらしい。

軽く感動しつつ眺めていたら「入ってみる?」とお姉さまから優しいお言葉が。いやマジでか。メイドカフェデビューしてしまうのか。というか1人でメイドカフェへ行く勇気はちり紙の薄さほどもないのだが、今は隣にカナがいる。つまりこれはチャンスというやつだ。今入らなければ一生メイドカフェに関われない可能性すらある。ええいせっかくだ、成るように成るだろう。入ってみようじゃないか。
「いらっしゃいませご主人さま!」
店に入ってそう言われ、予想はしていたが面くらってしまう。本当に呼ばれるらしい。だが悲しいかな。メイドカフェなのになぜこの子はメイド服じゃないのだろう。ただのウェイトレスに見えるのだ、がわたしの目がおかしいのかそれともそもそもここはメイドカフェじゃない違う何かだったのか。
わたしが頭上にクエスチョンマークを上げているのが見えたのか、
「そっか、ハロウィンだからかな」
なるほど、たしかに言われてみれば張り紙やら立て看板やらにハロウィンキャンペーンだのなんだのと色々書かれている。つまり本来はメイド服なのだが、ここ最近に限っては衣装が違うらしい。タイミングが悪いの良いのかなんとも言えないところである。っていうかメイド見たかったメイド。見る機会そうそうないのだから。テレビの中だけのものだ。
そこから席についてメニューを眺めつつ、店員さんから色々説明が。内容はちょっと忘れてしまったのだけれど、なんか無駄に長く噛みそうな内容で辛そうであった。それもあってか、なんか心なしか店員がめんどくさそうに感じたのだが気のせいだろうか。

メニューはこんな感じ。ファン歓喜と言わざるをえないだろう。姉が来たら卒倒しそうだ。ニヤリとしてしまうのはよほどわたしがシュタゲ好きだからなのか。カナには感謝しなければならない。この子がいなければ来ることなど一生なかっただろう。っていうかこのオムライス世界がヤバイらしいが、ヤバイのはお前の値段だと言いたい。
ここでカナがフェイリス、わたしがミスターブラウン、そしてオマケにまゆしぃカラアゲを頼んでみた。なんかメニューの目玉っぽいオムライスに目が釘付けになるものの、値段以前に先ほどごはん食べたばかりなので食欲がなく、またいつか来るときに食べることにした。味はどんな感じなのだろう。謎である。
そしてそこからちょっとガンダムについて聞いてみたり、PSOについて聞いてみたり色々と話していた。
っていうかまさかリアルで、さらにメイドカフェで、カナと2人で話すという状況になるのがあり得ないというか予想すらしてなかった状態なので密かに笑ってしまった。まさかこんな風に話せる日が来るとは思わなかったからだ。昔の自分に話しても信じてもらえないに違いない。
そうこうしていると注文していた品が運ばれきた。
「こちらがフェイリスです。正面に向けさせていただきます」
と、ドリンクの向きを揃えてカナの前に置かれる。向きなんてあったらしい。なかなか芸が細かいじゃないか。フェイリスの耳というかツインテを模した飾りがある。
「こちらがミスター・ブラウンです。同じく正面に」
無理するなメイドよ。これに正面はない。

さて、そして気になっていたお味。ミスターブラウンはカフェオレ系だったので特に問題ないというか無難というか、カナのがどんな味だったのか気になるところ。美味しいと言ってた気がするのだけれど、どうだったのだろうか。
ちなみに同じく頼んでいたまゆしぃカラアゲさんは和風ソースのかかったもので、なかなか美味しいカラアゲであった。鶏肉好きとしてはカラアゲならオールオーケーなのだけれど、たまーに変なカラアゲ出すお店が存在するのだ。ここはそんなことなかったらしい。さすがじゃないか。
そしてそこからだらだらっとしつつ、時間もアレなのでそろそろ帰ることに。
支払いをしようとしたらカナが隣でサイフを開けようとしていたので出口へと押しやる。まさかお金を出す気じゃあるまいな。こんな遠くの、さらにわたしの好みにあった店を探して案内までして、お金まで出そうとするとは侮れない。リアル妖精のスペックはさすがと言わざるをえない。
そんな感じでカナを出口へと追いやると、メイドがめちゃくちゃどうでもよさそうに、
「カッコイイデスゴシュジンサマー」
お前よほど張り倒されたいらしいな。
最近のメイドは随分とフレンドリーになってしまったものである。昔の執事のようなガチガチの雰囲気ではないらしい。その方が客受けがいいのだろうか。よくわからない。これも時代なのか。
そんな話をしつつ、更なる目的地へ。どうやらオカリン達が食べていた牛丼屋のモデルとなったところへ連れて行ってくれるらしい。っていうか実在したんですかアレ。ほんとに牛丼屋なんだろうか。ちなみにカナ曰く、なんか超頑固っぽいお店で怖いらしい。なんだろうそれは。
そして2人でふらふらとお話しつつ、こっちかな、あっちかななんて迷子になりつつ、ついにウワサの牛丼屋を発見。さすがカナと言わざるをえないだろう。
しかしカナが一言、
「入口からしてなんかアレは……」
そう言われ、よく目を凝らすとなんか入り口にモップらしき掃除セットが立て掛けられている。なんだ改装中か何か。さすがに出入口たるものにそんなものを放置するなどありえまい。実は目的の牛丼屋はアレの隣だったりするのではないだろうか。
なんて思ったが違うらしい。ほんとにここがウワサの牛丼屋のようだ。っていうか外から様子を見ると、なんか店員のおっちゃんが座って新聞読んでるんだがなんだろう、あの店内は空間の時代が違う気がする。主に昭和的な何か。
思わず苦笑いしてしまった。どうやら噂は本当らしい。頑固系飲食店ということで有名になったらしいのだけれど、伊達というわけではないようだ。入るのに勇気がいるとはこれいかに。商売になっているだろうか。というかなんであのおじさんあんなに不機嫌そうなんだ。宝くじでも外れたのか。

どうせ来たなら味わって帰るべきなのだけれど、お腹いっぱいだったり、時間もアレなので写真だけ撮って帰ることに。まさかこれほどの雰囲気を持っているとは思わなかった。かなりレベル高い牛丼屋だったんじゃかろうか。
そんな話をしつつホテル近場の駅へ。どうやら改札ギリギリまで見送ってくれるらしい。なんて優しいのだろうか。まさにマンガにでも出てきそうお姉さんという感じである。抱きついていいですか。
そしてここであることが判明した。
「あれ、たっちゃん。お土産は?」
土産って。もみじまんじゅうのことだろうか。きちんと持っている、持っている、が。
いや待て、一つ足りていない。カナから貰ったお土産が、ない。
おいおい冗談だろう。まさかの紛失。
どこで失くしたんだ。道中じゃないな。店か? メイドカフェか?
記憶を辿るもすぐ答えは出ない、はずだったのだが、
「あ、たぶんデニーズじゃないかな」
そうカナが教えてくれた。おそらく店を出てからわたしが持っていないことを思い出したのだろう。っていうかよく見てくれていたものだ。観察力と記憶力が凄いんだが。
大急ぎでデニーズを調べてみる。電話番号ぐらいは載っているだろう。アキバ近くのデニーズならわかりやすい、はずなんだがすぐに出てこない。複数あるらしい。あれはどのデニーズだろうか。
そんなことをしているとカナが「はい!」とスマホを差し出してきた。画面にはデニーズの電話番号。所要時間がまさかの15秒である。いやいやさすがに早すぎないだろうか。ねえカナ、あなたはいったいどんだけ動きが迅速なのでしょうか。
カナが番号を読み上げてくれたので、そこへ電話をかけてみた。
すると電話向こうから礼儀正しい女性の声が。どうやらデニーズで合っているらしい。店もばっちり合っているようだ。
そして荷物を置き忘れたことを伝えて調査してもらったところ、どうやら机の下に紙袋が置いてあったという。どうやら無事らしい。よかった、本当に。わざわざカナが可愛いと思って買ってくれたものを完全に失くしたとなれば切腹ものである。というか自分が許せない。
ひとまず名前をお店の人に伝え、夜には袋を取りに行くことを伝えた。本当に危なかった。
とはいえ結果もなにもかもカナのおかげである。この子がいなかったら完全に行方不明になっていたかもしれない。まったく、どこまでお世話になってしまうのだろうか。
そしてお別れの時間。改札の前でばいばいすることに。またいつか会えるだろうか。いや会えるか、っていうかなんか奢ってあげたい。何が好物なのかわからないけれど、お肉とかじゃなくてお魚だろうか。お酒とかもありかもしれないな。わたしはあまり強い方ではないが。
次会うときは、このときのことを笑って話せるといいな、なんて思いながら手を振った。どうか、お元気で。
※まだつづきます
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